じぇねれーしょん


七緒さんは澄まし顔で食事を続けている。


七緒さんのポーカーフェイスは本当に読めない。


俺が痺れを切らしたのが分かったのか、七緒さんはため息交じりに肩を竦めて言った。



「リカがヤキモキさせてくれるからお返しよ。…この格好は、今日リカと会うってのを知った清水さんと麻生さんがおせっかいにも手によりを掛けてくれちゃったの…付け焼刃で、体裁が悪いわ…」


清水さんは事務所のメイクアップ、麻生さんはコーディネーターだ。


ああ、もう…っ!と七緒さんが口を尖らせる。


「二年も経ってるのに、私ったら何も変わらないわ。…リカはこんなに格好良くなったってのにね。」


いや、そんなめっそうもありません。


外見は多少成長したかもしれないけど、中身はまるで成長してないみたいだから。


七緒さんをどうやって手中に収めようか、とか腹黒く企むあたりなんかは特に。


七緒さんの一言でバカみたいに舞い上がっちゃうトコロもね。



俺は手を伸ばして七緒さんの手を掴んだ。


七緒さん、俺をスキって本当?

二年前と変わらないでいてくれるって本当?

俺には触れる権利がまだ与えられてる?


色々な言葉が浮かんで呑みこまれて、一番ストレートな言葉が口から零れた。



「食事の途中で大変モーシワケナイけどっ…今すぐ帰りたいッ!」


触れたところから波状する熱。


きっと、このままここにいたらのっぴきならない事態になっちゃうんだけど、俺。



< 230 / 233 >

この作品をシェア

pagetop