じぇねれーしょん
酒を飲みながらの他愛無い近況報告。
気を張っていたお陰で忘れ去っていた疲労がジワジワと染み出てくる気配に、七緒は眼鏡をずらして目頭を指で揉み込んだ。
丁度その時、深海のような店内のカウンターの中央に矢のようなスポットが射した。
「ホラ。始まる。」
単に言われて七緒は怪訝な視線を向けた。
スポットライトの中にはバーテンダーの格好をした娘が一人。
周囲のあけすけなやんやに愛想のよい笑顔で応えている。
スラリとした長身だが、面差しは意外とあどけなく二十歳そこそこといったくらいだろう。
単がラッキー!と思うのも納得のカワイ子ちゃんだ。
――――キラリ、
ライトを反射して何かが宙を舞った。
七緒は、あっと目を見張った。
フレアバーテンディング。
ボトルが少女によって次々と宙に投げられていく。
ボトルが軽やかにジャグリングされている合間にテーブルにはいつの間にかシェイカーが並び、その中に酒が流し込まれていく。
今度はボトルに代わり、 幾つかの液体が注がれ蓋をされたシェイカーが宙を舞った。
バックミュージックと手拍子に合わせて少女は踊りながら次々と見ごたえのある技を披露した。
最後に、出来上がったカクテルを正面の客に振舞って、ショーは拍手喝采で幕を閉じた。