じぇねれーしょん
一人になったカウンターで七緒はグラスを見詰め暫く考えた。
思いもかけずワクワクさせてくれたこの店に好感を持ったが、疲労が刻々と広がっている。
このグラスを空けたら今夜は帰ったほうがいいだろう。
それほど疲れていたにも拘らず単の誘いに乗ったのも、多忙を理由に忘れたフリをしていたとはいえ、やはり落ち込んでいた所為だろう。
単の誘いにしても七緒を気遣ってのことだと分かっている。
しかしそのことには一切触れず、挙句、逢引で悪びれもせずフェードアウトとは単らしい。
「あのっ………お次は何に致しましょうか?」
不意に掛けられた声に七緒ははっとし、少しハスキーな声の主に視線を向けた。
そして、あらっ、と目を見開く。
はにかんだ微笑で七緒のオーダーを待っていたのは先ほど見事なショーを見せてくれた少女だった。
可愛い顔をしているからか華奢な先入観があったが、対峙すると意外に大きい。
とはいえやはり顔や雰囲気は、若さそのままに素直で明るく可愛いものだ。
「何かリクエストがあればお造り致しますが。」
返事をそっちのけに観察していた七緒に、少女は再度尋ね返した。
どうやら考え事の間にカクテルを飲み干していたらしい。