じぇねれーしょん
「男ってつくづく勝手な生き物ね。束縛すれば鬱陶しがるくせに、割り切りの良い女はツマラナイだなんて。」
忙しくて会えない日々の間、彼を忘れていたわけではなかった。
ずっと会いたいと思いながら、でも会う暇もなくて。
ようやく仕事に切りがついて会いに行った七緒に彼から『浮気』のカミングアウト。
正直、悲しかったし、腹も立った。
だけど、会えない寂しさから仕出かした過ちだと思ったから、勤めて平静を装い許した。
しかし、そんな七緒の心情も知らず、呆れ顔をした恋人は別れ話を切り出した。
『本当に愛されてるのか分からん』と。
「まぁ、仕事の所為だけには出来ないんだけどね……。」
カウンターに顔を伏せて、独り言のように呟く。
だって、もし負い目がなかったとしても、男の不義に対し小娘のようにキャンキャン吠えられたか、と自問すれば答えはノーだ。
残念ながらキャラじゃない。
現に別れ話を持ち出された時も、仕事で疲労困憊だったこともあったが、詰る気力も泣いて縋る勇気もなく簡単に終らせてしまった。
「所詮、冷たくて、ツマンナイ女なのよ、私は………」
視界がどうしようもないほど揺れる。
疲労は七緒が思っていたよりも早く深く体を占領していたようだ。アルコールのお陰でいきなりやってきた睡魔に太刀打ちする力もなかった。
「ちょっ、七緒サンっ!?大丈夫っ?」
かなり慌てているらしいバーテンダーの声を遠くに聞いたのを最後に七緒はカウンターに突っ伏し意識を手放した。