じぇねれーしょん
不意に、腕の力が緩んで小鳥みたいに唇を啄ばまれる。
「七緒さん、今夜の時間は?……まさか一杯呑んで仕事にトンボガエリとかいう予定じゃないよね?」
「意外と信用ないのね。大丈夫だって言ったでしょ。ちゃんとキリはつけてきたわ。」
それがどういう意味を含むのか知っていて、七緒はそう告げた。
途端、リカは勢いよく立ち上がった。
「行こう、家!店はまた改めて招待するから、今夜はお家貸切カクテルバーでガマンしてね?」
「不服はないわ。」
寧ろ、ウレシイ……そんな言葉は飲み込んだけれど。
歩き出してすぐ、つながれたままの手に怪訝な視線を向ける。
「…手。このまま帰る気?」
リカがニヤッとイタズラっぽく笑う。
「そ。だって普段はヤバイからこーゆーの絶対出来ないけど、今夜は許されるでしょ。俺のトモダチにも俺のバイト知ってる奴いないし、見られても仲睦まじい姉妹じゃん?」
得意げに笑うリカは放り出された時のまま。
夜目なら確かにオンナノコだ。
七緒の胸がチクリと痛んだ。
しかしソレを気取られないように飲み込んで、いつもどおり素っ気無く返す。
「…ま、いいけど。」