暗黒ショートショート
双子
双子
双子のあたしたちは顔も背丈もそっくりだった。
けれども育ち方は大きく異なり、わがままで甘えん坊に育ったあたしと正反対に、姉は大人だった。
必要以上に傷つくことを知って成長した姉の左手には、無数のリストカットの痕があった。
しかし、姉の夫である男は優しく、その傷を優しくなでることが日課だった。
姉は落着いた性格をしていたが、悪く言うと何事にも深い興味を示さない性格だった。
それは、傷が増えれば増えるほどかたく殻を閉ざしているように見えた。
だから、そんな姉があたしよりも先に結婚するなんて思ってもいなかったし、こんなに優しい旦那を持つようになるなんて、考えてもいなかった。
それとも、男性は姉のように暗い過去を持つ女性に憧れるものなのだろうか?
いずれにしても、あたしの方が健康的で世間から外れてもいないのは紛れもない事実。
そんなあたしがいまだに結婚できないということが、どうしても納得いかなかった。
顔も一緒。
背丈も一緒。
スタイルだって、そんなに違わないと思う。
だとしたら、あたしが選ばれるべきだと思っていた。
あたしは、姉がいつも座っていたソファに腰をかけた。
興味もない雑誌を手に取り、あくびがでそうになるのを必死でこらえる。
意味の理解できない文字の羅列を目で追っていると、義理兄がいつものように隣に座ってきた。
そして、何も言わずに左腕に触れる。
その瞬間、思わず身をそらしそうになってしまった。
いけない。
そんなに緊張しちゃダメよ。
自然に自然に。
そう思いながら、チラリと義理兄の方を見た。
すると、義理兄はリストカットの痕をなでるばかりで、一度たりともこちらを見ようとしないのだ。
どうして?
そう疑問を感じた時、義理兄は「とても綺麗な傷跡だ……」と、うっとりとつぶやいたのだ。
その瞬間、あたしはすべてを理解した。
義理兄は、姉を愛していたのではない。
すべての愛は、この傷跡に注がれていたのだと。
あたしは、殺害後左腕を切断し裏庭に埋めた姉のことを思い出し、ひどく罪悪感にさいなまれたのだった。
双子のあたしたちは顔も背丈もそっくりだった。
けれども育ち方は大きく異なり、わがままで甘えん坊に育ったあたしと正反対に、姉は大人だった。
必要以上に傷つくことを知って成長した姉の左手には、無数のリストカットの痕があった。
しかし、姉の夫である男は優しく、その傷を優しくなでることが日課だった。
姉は落着いた性格をしていたが、悪く言うと何事にも深い興味を示さない性格だった。
それは、傷が増えれば増えるほどかたく殻を閉ざしているように見えた。
だから、そんな姉があたしよりも先に結婚するなんて思ってもいなかったし、こんなに優しい旦那を持つようになるなんて、考えてもいなかった。
それとも、男性は姉のように暗い過去を持つ女性に憧れるものなのだろうか?
いずれにしても、あたしの方が健康的で世間から外れてもいないのは紛れもない事実。
そんなあたしがいまだに結婚できないということが、どうしても納得いかなかった。
顔も一緒。
背丈も一緒。
スタイルだって、そんなに違わないと思う。
だとしたら、あたしが選ばれるべきだと思っていた。
あたしは、姉がいつも座っていたソファに腰をかけた。
興味もない雑誌を手に取り、あくびがでそうになるのを必死でこらえる。
意味の理解できない文字の羅列を目で追っていると、義理兄がいつものように隣に座ってきた。
そして、何も言わずに左腕に触れる。
その瞬間、思わず身をそらしそうになってしまった。
いけない。
そんなに緊張しちゃダメよ。
自然に自然に。
そう思いながら、チラリと義理兄の方を見た。
すると、義理兄はリストカットの痕をなでるばかりで、一度たりともこちらを見ようとしないのだ。
どうして?
そう疑問を感じた時、義理兄は「とても綺麗な傷跡だ……」と、うっとりとつぶやいたのだ。
その瞬間、あたしはすべてを理解した。
義理兄は、姉を愛していたのではない。
すべての愛は、この傷跡に注がれていたのだと。
あたしは、殺害後左腕を切断し裏庭に埋めた姉のことを思い出し、ひどく罪悪感にさいなまれたのだった。