世界は私達に優しくない
「天狗じゃなくて"大天狗"、ね!」
「たいして変わんないだろ」
「変わります! あっ、真田幸村かっこいい~」
ゲームのオープニング映像に映し出される美形の男達を由希が大騒ぎで見てる隣で、凌空はオレンジジュースを飲み溜息を吐いていた。
あーでもないこーでもないと興奮して騒ぐ由希に、凌空は呆れた様に適当に合相槌を打ちながらも、楽しそうに笑みを浮かべる由希に内心嬉しくてならなかった。
「へ~、このゲームのヒロインって、現代から戦国時代にタイプスリップしちゃう設定だったんだぁ」
「"へ~"って、知ってたから買って来たんじゃねーの?」
「ううん。パッケージの絵がかっこよかったし、声優さんも好きな人だったからいっかーって」
「何が"いっかー"だ! それで失敗したらどうするんだ? ん?」
「い、いひゃい…」
ニヤニヤしてる由希の頬を両方に引っ張り、口元を引き攣らせながら凌空は恐い位の笑みを顔に張り付けていた。