世界は私達に優しくない
 
「凌空…」


由希がそっと声をかけたら、俯いていた凌空は僅かに肩を上げ、眉を寄せた険しい表情の顔を上げた。


「っ、俺…お前に酷いこと――」

「何言ってるの? 私凌空に何もされてないよ?」


頭を抱え歯を食い縛る凌空とは対照的に、由希はまるで何事もなかったかの様にベッドの端から足を出しぶらぶらと揺らす。


「あっ、それよりももう大丈夫? どっか体おかしくない?」

「……」


凌空の体を上から下と心配そうに眺める由希に、凌空は何も言わず目を反らす。その様子気付いていながらも、由希は話を続けた。


「さっきのって、絶対何かの番組のドッキリだと思うんだ!」

「……」

「だからヴァンパイアっていうのも嘘だよっ」

「……」

「きっと暫くしたらドッキリ大成功って看板持った人が来るって!」


ね? と笑い飛ばす由希だったが、なんの反応も示さない凌空に、徐々に由希の笑みが消えて行く。


「ねぇ凌空…。なんか、言ってよ…?」


ベッドから立ち上がり、座り込んでいる凌空の前にしゃがみ込んだ由希は、肩に触れようと手を伸ばしたが、


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