世界は私達に優しくない
あれだけ出ていた血も、今では凌空に全て舐め取られてなくなっていた。血が出ていなくても、やはり傷はそれなりに深かったのか、ヒリヒリと傷みを伴う。
しかし由希はあの夜中の様に恐怖心は感じておらず、溜まって居た涙もそういう物ではなかった。
由希自身でも説明出来ない、よく分からない感情が蠢いており、手の平を見つめたままボーッとする。
しかし凌空にはその姿が、由希を傷付けたんだと思い込んでしまう原因になり顔を青褪める。そんな凌空の様子に、リズシアは目を細め後ろから眺めて居た。
「由希っ、俺また…!」
「え、だ、大丈夫だよ?! ほら! 大丈夫でしょ?」
口に手を当てたまま由希を見つめて居た凌空に、両手を広げ大丈夫だと、なんともないと主張するが、凌空はそんな由希を見ても渦巻く罪悪感は消えない。
「そ、それに! 血飲んだから大丈夫なんでしょ?! ヴァ、ヴァンパイアなんとかっていうのだって、これでもう大丈…」
「ぶ、じゃないんだなー、これが」
ストンッと由希と凌空の中間、三角形になる様な位置に座ったリズシアは、面倒臭いとでも言う様な溜め息を吐きながら二人に視線を向ける。
どこかでもう大丈夫だと思っていた二人は、予想外のリズシアの言葉に絶句した。