世界は私達に優しくない
「由希っ、早くご飯食べちゃわないと学校遅れるわよ?」
「ん~…」
ぼうっとしながら箸でご飯を口に運ぶ由希に、「凌空君に先に行かれちゃっても知らないんだから!」っと呆れながら言う母親に、つい先程まで虚ろだった目を見開き慌てた様にご飯を食べ終え、時計を見上げ慌ただしく家から飛び出して行った。
そんな慌ただしい由希の姿に、母親はそっと溜息を吐き食器を片付けるのだった。
玄関から出て隣の家の玄関を見たが、そこにはお目当ての人物はおらず、本格的に置いて行かれたと感じた由希は、肩に掛けて居た鞄を掛け直し何時もの道を走って行く。
周りを見ながら走っていると、フードを被り同じ制服を来ている男子が目に入った。その後ろ姿は由希のよく知っている人物で、
「凌空!」
その背に向かい声を掛けながら走り寄って行った。横に並ぶ様速度を落とし顔を覗き込んだ由希は、やっぱり凌空だと安心した。
しかし凌空は横に来た由希に目もくれず、スタスタと歩みを進める。何時もならば気付く筈なのだが、凌空は隣に居る由希に気付かない。
いや、
――無視していた。