世界は私達に優しくない

　
｢みんな由希になんか有ったと思って心配してんのよ。たく、気になるなら聞けばいいのに！　こそこそと、バレてるっての｣


由希が向ける視線に気付いたえり、は呆れと笑いを含んだ様な表情でクラスメイトを一瞥した後、なんとも言えない顔をしている由希を見た。


｢ほらっ、さっさと吐きなさいよ。まー、なんとなく分かるけど…｣


唸り机に突っ伏した由希に、それでも聞こうとするえりは溜め息を吐き出しながら、由希の頭をポンポンと優しく叩く。


｢幼なじみ君、なんでしょ？｣


ビクッと、由希の肩が跳ねた。それを見逃さなかったりえは｢やっぱり｣と笑う。


｢そ、んなんじゃ…ない、もん｣


口を尖らせたまま、目を伏せ見つめるりえの視線から逃れようとする。だがりえは由希の態度で確信したのか、足を組み溜息を吐いた。


｢喧嘩でもしたの？　幼なじみ君とっ｣

｢…分かんない｣


むくりと起き上がり、力なく背凭れに背を預けぼそりと呟いた由希は、俯き自分の手を見つめる。