世界は私達に優しくない
 
この傷はあの時ぶつけた野球ボールの跡だったや、テーブルの上に乗って肩車をした時に頭が天井にぶつかった等。


「あの時は勢いあまって頭をぶつけて、本当に痛かったなあ…」


ぽつりと呟き、また溜め息を吐く。


(もう、前みたいには戻れないのかもしれない)

(このまま会う事もなくなって、話す事もなくなって。そのまま…ただの他人になっちゃうのかな)


「そんなの…寂しいよ――」

「何が寂しいの~?」


腕で目を隠す様被せて呟いた言葉。

独り言のつもりが、何故か返事が返って来た事に驚き、目を覆って居た腕を退け目に飛び込んで来た人物にまた驚く。

鼻と鼻が触れてしまうんじゃないかという程至近距離にリズシアの顔が在った為、「ひっ」と思わず悲鳴を上げ起き上がり後退った由希。


「悲鳴上げる事ないんじゃなーい? まるで俺がバケモノみたいじゃん」

「そ、それに近いじゃないですか!!」


壁に背が当たりこれ以上後退り出来なくなったが、それでも後退ろうとする由希に心外だと肩を竦める。


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