世界は私達に優しくない
 
危ないという言葉だけで、リズシアが何を言いたいのか分かってしまった由希は、体を硬直させる。


「中途半端に血を飲んだ所為で、状況は更に悪化した。またすぐ残りの分を飲めばよかったのに、荒川凌空はそれを我慢した」

「そ、それがなんだって…」


(もしかしたら、なんて私の頭を過る)

(だけど違う、きっと…)


「ほんとさ、こんな強情な人初めてなんだよね」

「……」

「あれだけ吸血衝動が出て居るにも関わらず、絶対血を飲もうとしないんだからさっ。でもそれも…今日までだ」


リズシアの射ぬく様な瞳に、ドクンッと由希の心臓は跳ねた。


「あの状態からすると、今日がピークだろうな~。ねぇ桜木由希…助けなくていいの?」

「…っ」


楽しそうに振り返ったリズシアに、由希は声を漏らし俯く。

そして次の瞬間――部屋から飛び出していた。


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