半分こ。


一方
大荒れの元凶、
風雅は新選組の屯所にいた。

隊士達とは
彼らが京都に上って来たとき
道に迷った局長を
送り届けたのがはじまりだった。


「よ。」

風雅はふすまを静かに開ける。

風雅は目鼻立ちが整っている。
だが背は意外に低い。
髪は高く上げても腰まではあった。
右目は見せまい、
と付けられた眼帯が
`彼'はとても似合っていた。

「おっ!!…りんちゃん、久しぶりだな。」

近藤勇が軽く手を上げる。

先程話した
道に迷った局長というのはこの男の事だ。

「だから、その呼び方はやめてくれって。」

風雅は呆れたように息をつく。

「いいじゃないですか りんさん。」

近藤に変わって
一番組 組長の沖田総司が言う。

日の光を浴びてか
彼の髪はいつも茶色く見える。


新選組の隊士達は
皆、風雅の事を`りん'と呼ぶ。

何故なら それが彼の
いや 彼女の本名だからだ。

風雅は女の子なのだ。


これが
一部の人しか知らない彼女の秘密だった。


「だから、総司も呼び方…

言いかけた時、外から音がした。

何の前触れも無くふすまが開く。

「りん!」

この男は副長の土方歳三。

艶やかな髪に鋭い目付き。
役者のようにすっきりとした顔立ち。

土方は隊士に厳しくりんには甘いので
近藤をはじめとした隊士達は困っている。

「土方さんっ!!」

この2人は仲が良い。
だが土方は
りんを子供のように扱う時がある。

彼はりんの頭を撫でた。

「久しぶりだなぁ…りん!」

「ちょっ…止めてください。土方さん!」

りんは髪を直しながら
逃げるように部屋を出た。


< 2 / 18 >

この作品をシェア

pagetop