体育館12:25~私のみる景色~

 ジンジンとする右手を左手で押さえた。


 痛いし、しびれて指先がピリピリしてくるし。


「せ、先輩……。ほんとに逃げないから、手、離してもらっていいです?」


 私が痛がってることに気づいたのか、焦ったように手を離してくれた。


「わり。強く握りすぎたみてえ。大丈夫か?」


 眉を八の字にたれ下げて私の顔を覗き込む表情は、本当に心配そうに歪んでいた。


 そんな顔を見たら、逃げようなんて気はなくなってしまった。


「大丈夫ですよ? ちょっとしびれちゃっただけだから。それより、なんでまだこんなとこにいるんですか?」


 中原先輩は誰よりも早く体育館を出たはずなのに。


 右腕をさすりながら、聞いてみた。


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