体育館12:25~私のみる景色~
「ん~? 別に何でもねえよ?」
いやいや、なんでもないならそんなに近づかないでほしいんだけど。
恥ずかしいしっ。
先輩の胸を、両手でぐいぐい押して離れようとしてみるけど、びくともしない。
それにもうすぐ予鈴のチャイム鳴るし、早く教室に行きたい。
というか、思いっきり押してんのになんでどいてくれないわけ!?
「先輩っ! 教室行きたいからどいてくださいっ」
「はあ? またそんなこと言って逃げるんだろ?」
「いや、だってもうすぐ4時間目始まる……! あ、ほら、チャイム! チャイム鳴りました、予鈴!!」
チャイムが鳴ってるのは先輩にも絶対聞こえてるはずなのに、なぜか楽しそうに笑ったままどいてくれない。