体育館12:25~私のみる景色~

「ん~? 別に何でもねえよ?」


 いやいや、なんでもないならそんなに近づかないでほしいんだけど。


 恥ずかしいしっ。


 先輩の胸を、両手でぐいぐい押して離れようとしてみるけど、びくともしない。


 それにもうすぐ予鈴のチャイム鳴るし、早く教室に行きたい。


 というか、思いっきり押してんのになんでどいてくれないわけ!?


「先輩っ! 教室行きたいからどいてくださいっ」


「はあ? またそんなこと言って逃げるんだろ?」


「いや、だってもうすぐ4時間目始まる……! あ、ほら、チャイム! チャイム鳴りました、予鈴!!」


 チャイムが鳴ってるのは先輩にも絶対聞こえてるはずなのに、なぜか楽しそうに笑ったままどいてくれない。


< 106 / 549 >

この作品をシェア

pagetop