体育館12:25~私のみる景色~
「……先輩。これはいったいどういう状況なんですか?」
口元がひきつるのを感じながら、先輩を見上げて聞いた。
「ん、これ? 巷で有名な“壁ドン”ってヤツですけど。お子様は知らねえのかな?」
すっごいさわやかな笑顔で言ってるけど、作り笑顔ってわかるからこわい!
それに、壁ドンくらい知ってるし!
私のバイブルである恋愛小説にも、よくそのシーン出てくるしっ。
「お、その顔は知ってんだ。……じゃあ、次に俺がしようとしてること、わかるか?」
「え……?」
先輩は空いている左手で、私のあごをそっと持ち上げた。
伏し目がちな瞳は、私の顔の一点を見つめてるみたい。
揺らがない視線には、なんだか熱がこもっているように見える。