体育館12:25~私のみる景色~
すると、いきなり目の前から雑誌を投げつけたような音が聞こえた。
……ついでに、中原先輩の「ぶっ!!」なんてうめき声も。
さっきまですぐそばにあった中原先輩の気配がなくなって、おそるおそる目を開いた。
そして視界に映ったのは、右頬をおさえながら私の足元にうずくまる中原先輩と古典の教科書。
たぶん、この教科書が先輩のほっぺにクリーンヒットしたんだろうな。
だけど、誰がこんなこと……?
そう思って、教科書が飛んできたと思われる方向をふいに見る。
「悪いな、慶。手がすべった」
ほんの数メートル先。
腕組みをして、心なしか不機嫌そうな顔でそこに立っていたのは、私の好きな人。
……佐伯先輩だった。