体育館12:25~私のみる景色~

 中原先輩が椅子から立ち上がって、私の方に近づいてくる。


「ななな、なんですかあ~」


 もともとのイカつい顔が、さらにきわだって見えるよっ。


「ほんとは、昨日の昼もお前のこと待ってたんだけど? この俺を2日も待たせるなんていい度胸してるよなあ? なんで逃げたんだよ、ああ?」


 私のほっぺを片手でつまむから、口がたこさんみたいになっちゃってる!


 こんな顔、佐伯先輩には見られたくないのに~!


 それに、昨日は昼休みりんちゃんに呼び出されてたんだよっ。


 逃げてなんかないのに、先輩勘違いしてる!


「しぇんぱい、はにゃしてぇぇぇ」


 ほっぺムニムニされてるから、うまく喋れないっ。


「あ、そうだ。宮下、昨日の昼に返そうと思ってたのに、忘れてたわ。ほら、これ」


 りんちゃんは、“昨日の昼”という部分を強調して、何かを私の近くに置いた。


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