体育館12:25~私のみる景色~
「慶にも教えてたんだから、俺だっていいよね?」
いやいや、中原先輩には教えたっていうより、勝手に登録されたんですけど……!
不可抗力以外のなにものでもないんですけどっ!?
そんなふうにパニックにおちいってるうちに、佐伯先輩はいつの間にか私の手からケータイを奪っていて。
「はい、完了」
そう言って、佐伯先輩はあっという間に自分のアドレスを私のケータイに登録してしまった。
「あ、ありがとうございます……」
渡されたケータイを、ギュッと握り締めた。
先輩のアドレスが入ったピンクのケータイ。
きっとメールなんかこないだろうし、私からもメールなんてできないだろうけど。
それでもこの瞬間。
私にとっての1番大切なものが、このケータイになったことは言うまでもない。
このケータイは、ずっと大事にしようって心に決めたんだ。