体育館12:25~私のみる景色~
「ちょい待て、亜希。早まるな! 俺が好きなのは……!」
私の腕をガシっとつかんで説得しようとしてるけど。
「大丈夫だよ慶ちゃん先輩っ。今は同性愛とか珍しくないからっ。私は批判はしないけど、応援は絶対しないんだからね!!」
「だから、そうじゃなくて聞けよっ!」
慶ちゃん先輩が吠えるけど、メラメラと目に炎を宿す私にはそんなの関係なかった。
これからは、妥当慶ちゃん先輩!
女の子よりも強敵かもしれないよね?
なんてったって佐伯先輩の1番近くにいて、佐伯先輩のことをよく知ってるんだもん。
……というか、佐伯先輩が女子に冷たいのって、もしかして男の人が好きだからとか?
もしかして、慶ちゃん先輩が好きとか?
それはないよね、ないないないない!!
とりあえず私は、佐伯先輩を怒らせちゃった理由を聞いて謝らないとなあ……。
今は嫌われててもいいから、いつか修復できますように。
「……俺、もしかしてとんでもないことしちまったか?」
心の中でいろいろなことを想像している私の横で、慶ちゃん先輩が愕然と呟いていることになんて、私はまったく気がつかなかったんだけど。
こうしてこの日、慶ちゃん先輩という超手ごわいライバルができたのだった。