体育館12:25~私のみる景色~

「いや、なんつーか、まあ、うん」


 と、なんとも歯切れの悪い返事をいただいた。


 それはまあいいとして、お弁当箱が軽いような気がするのは気のせい?


「あの、先輩。もしかしてと思って一応聞きますけど、お弁当食べました?」


 すると中原先輩は思い出したようにこう言った。


「言うの忘れてたわ。その中身、恭也が食ったよ」


 その言葉のあと、一瞬だけ空気が静まり返った。


 中原先輩、今、とんでもないこと言ったよね?


 私の呆然とした表情から感情を読み取ったのか、中原先輩は慌てて付け足すように弁解し始めた。


「いや、弁当腐ると悪いし、って。いや、あの、俺も少し食いました。すみません……」


 いつものチャラチャラとした雰囲気は消え失せて、なんだか中原先輩が小さく見えた。





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