体育館12:25~私のみる景色~

 それに気づいて、なんだか嬉しくなった。


 もしかしたら、自分の利害も考えての行動かもしれないけれど、それでも嬉しさの方が大きい。


 ドキドキと胸が音を奏でる。


 体温も上がっていってる気がする。


 どんなことを言われるのかわからないし怖いけど、やっぱり好きだなあ……。


 こんな些細な優しさを目の当たりにしたら、今までの小さな気遣いを思い出したら、期待しちゃいけないって思っても、心のどこかで期待しちゃう自分がいる。


「佐伯先輩……?」


「はあ……、やっと口きいてくれた」


「え?」


 そのまま先輩はずるずるとしゃがみ込んでしまった。


 えっと、一応鍵のことで声をかけたつもりだったんだけど、聞こえてなかったのかな?


 無視されたのかとも思ったんだけれど。


 それよりも私、ちゃんと喋れたよね?


 少しは成長してるってことかなあ。


 
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