体育館12:25~私のみる景色~
笑みを浮かべてごまかしてみるけど、騙されてくれたのかはわからない。
佐伯先輩はそれ以上、赤くなった目元については触れてこなかったから。
ちょっと悲痛な面もちで、手を離したから。
きっと、泣いてたことなんてわかってるんだろうなあ。
「ねえ、聞きたいことがあるんだけど。いい?」
「は、はい? 私に答えられることなら何でもっ」
先輩にこんなふうに聞かれて、ダメですなんて答えが出るわけない。
迷わず即答したら、先輩はフッと笑って、真剣な顔つきになった。
そんなに深刻なことを聞かれるのかな?
私に答えられることだといいけれど。
「じゃあ聞くけど、何で今日バスケ最後まで見ていかなかったの」
……これはまるで尋問だ。
硬い表情で繰り出される言葉は、質問というより私を責めているみたいな感じだから。
というか、泣いてたことの答えになるような質問を一発目でしてくるって、佐伯先輩侮れない。