体育館12:25~私のみる景色~

 笑みを浮かべてごまかしてみるけど、騙されてくれたのかはわからない。


 佐伯先輩はそれ以上、赤くなった目元については触れてこなかったから。


 ちょっと悲痛な面もちで、手を離したから。


 きっと、泣いてたことなんてわかってるんだろうなあ。


「ねえ、聞きたいことがあるんだけど。いい?」


「は、はい? 私に答えられることなら何でもっ」


 先輩にこんなふうに聞かれて、ダメですなんて答えが出るわけない。


 迷わず即答したら、先輩はフッと笑って、真剣な顔つきになった。


 そんなに深刻なことを聞かれるのかな?


 私に答えられることだといいけれど。


「じゃあ聞くけど、何で今日バスケ最後まで見ていかなかったの」


 ……これはまるで尋問だ。


 硬い表情で繰り出される言葉は、質問というより私を責めているみたいな感じだから。


 というか、泣いてたことの答えになるような質問を一発目でしてくるって、佐伯先輩侮れない。

< 346 / 549 >

この作品をシェア

pagetop