体育館12:25~私のみる景色~
でもね、わかっちゃったんだ。
佐伯先輩は、この質問には答えないって。
なんとなくだけど、わかったんだ。
「はは、その質問には答えられないかな」
私の肩から手をおろして、佐伯先輩は力なさげにそう言った。
ほらね、やっぱり。
佐伯先輩は、この質問には答えない。
「それなら私も、さっきの質問には答えませんよ?」
精一杯明るくおちゃらけて言ってみたけれど、これは結構キツいね?
だって、わかっちゃったんだもん。
佐伯先輩には、好きな人がいるんだってこと。
胸がじくじく痛むけど、笑うしかないんだ。
自分で招いたことなのに、覚悟していたつもりだったのに、いざ核心に触れてみたら、大火傷。
なんで聞いちゃったんだろうなあって、後悔が押し寄せてくる。
質問に何か答えてくれなくても、表情でわかっちゃったよ?
好きな人のことになると、あんなふうに表情を崩すんだね。
もし好きな人がいないなら、私が聞いても何も反応を示さないはずだもん。
あれだけ様子が変わったら、誰でも気付いちゃうよね。
あーあ、告白する前に失恋かぁ。
まだ諦めるには時間がかかりそうだけれど。