体育館12:25~私のみる景色~
よろよろとドアに向かって、廊下に一歩足を踏み出した時だった。
「最後に。俺、宮下さんのことは嫌いじゃないかもね」
「え……?」
耳元で聞こえた声に驚いて振り返ったとき、ドアが閉まった。
まるで、それ以上の言及は受け付けないとでも言うかのように、ピッタリと扉は閉ざされた。
……ねえ、先輩?
嘘つきな先輩。
私はバカだから、何度つらくて苦しい思いを味わっても、自分に都合がいいように考えちゃうんだよ。
今の言葉、信じてもいいかな?
私のことを嫌いじゃないって、そう思ってもいいのかな?
私はまた、期待する。
そして傷つくかもしれないけれど、それでもいい。
「髪、もっと伸ばそ……」
胸元の辺りまである髪を一房すくい上げ、すっきりしたような悶々としたような複雑な気持ちで教室へと向かった。