体育館12:25~私のみる景色~

 男子のほとんどはとぼとぼとマットの方に行って、また練習を始めたけど、明らかに半分諦めが入ってる気がする。


 みーくんはなぜか足取りが軽かったけど。


「亜希、とりあえずできそうなとこまでできるか? つーか、続けてできたりするか? お前のタイミングでいいから」


 いつもの偉そうな態度はどこへやら、って感じの慶ちゃん先輩に言われた。


「あー、何年もやってないからわかんないですけど、やってみますっ」


 長くしかれたマットから少し離れ、靴と靴下を脱ぎ助走できる位置に着いた。


 この感覚、懐かしい……。


 埃っぽいマットのにおい、裸足で踏む体育館の床。


 たくさんの視線を感じる。


 慶ちゃん先輩も、ミナミ先輩も、そして佐伯先輩も。


 近くで私を見ている。


 緊張するし、久しぶりで怖いけど、やるしかない……っ!


 私ができれば、怖がってる先輩たちの不安もきっと取り除けるはずだよね?


 軽く足を踏み出し、3歩目で強く地面を蹴った。

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