体育館12:25~私のみる景色~

 ぐるぐる回る視界、手足に瞬間的に触れるマットの感触。


 全部が懐かしくて、宙を舞っている時間はあっという間だった。


 思ったよりも感覚は鈍ってなくて、続け技もバク転まではちゃんとできた、と思う。


 終わった後は、足が震えた。


 やっぱり少しこわかった。


 だけど、楽しい……!


 足になぜか力が入らなくて、ひざから崩れ落ちそうになった。


「……っ! 宮下さん、大丈夫?」


 あれ、あったかい。


 それに、この声、この匂いは。


「ふあっ!? さささ佐伯先輩っ!?」


 私を抱き止めてくれたのは、焦った顔をしてる佐伯先輩。


 その肩越しに、唇を薄くあけて呆然としている慶ちゃん先輩が見えた。


「もう、急に倒れそうになるから焦った……」


 うわあ、佐伯先輩に抱き締められちゃってますけど!?


 どうしたらいいんだろう、嬉しいけど周りの反応がこわいよ……!?


「きゃーっ! 亜希ちゃんすごいきれいだったし、かっこよかったー!」


「これならあとは宙返りできればカンペキだねっ」


「亜希にそんな才能があったなんて!」


 あれれ、この状況に目もくれず、私のことを褒めてくれちゃうんだ?


 だけど、佐伯先輩に抱き締められたままわいわいと声をかけられるから、嬉しいんだけど結構恥ずかしいっ!

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