体育館12:25~私のみる景色~
「先輩、ありがとうございます……」
かけてもらったブレザーをぎゅっとつかんで、お礼を言った。
夜の風は少しだけ冷たくて。
私の火照ったほっぺたを冷ますのに、ちょうどよかった。
「そろそろ行くか。ちなみに俺ら、チャリだから。お前は俺の後ろ乗れば?」
さっきまで黙って私たちの様子を見ていた中原先輩が突然そう言って、先に歩き始めた。
その声はどこかトゲトゲしていて。
なんで怒ってるんだろ、って思ったけど、あえて気にしないことにしてみた。
中原先輩の後を追うように、私も佐伯先輩と一緒に自転車置き場に向かった。
大好きな佐伯先輩と2人なのはすごく緊張したし、ありえないくらい心臓がドクドクいってて平然を装うのが大変だった。