体育館12:25~私のみる景色~

 ――――――事件が起こったのは、その翌日のことだった。


「宮下ちゃんさあ、どういうつもりなの? そんなに痛い目に合わせてほしいわけ?」


 ……噂が広まるのは、どうしてこんなにも早いんだろう。


 偶然、校内にある自動販売機で飲み物を買おうとしていたところにサエさんに会って、この前と同じ、旧校舎の体育倉庫に連れてこられた。


 なんだか今度こそ、いろいろと危ない気がする……。


「見てた子がいるんだよ? 宮下ちゃんが恭也とタクシーに乗ったところを。ねえ、2人でどこで何してたの?」


 にっこりと笑いながら問いただすサエさんに、恐怖しかわいてこない。


「宮下ちゃん、何とか言いなよ?」


 キレイな髪をなびかせて白い息を吐き出す姿は、まるで冷たい氷の女王様みたいで、ますます何も言えなくなる。


 というか、言えるわけないよ……。


 何も話そうとしない私に、サエさんは嫌に落ち着いた声で言った。


「まあ、別にどうだっていいけどね、何も言わなくても。宮下ちゃんにはどっちにしろ、ちょっと痛い目見てもらうからさ」


 寒さと恐怖で震え立ちすくむ私を見て、サエさんはにやりと笑いながら重くてぎしぎしと鳴る倉庫の扉を開いた。


 ま、まさかと思うけど、違うよね……?


 だけど、私の予想は数秒後にあっさりと裏切られてしまった。


 もっと早く気づいて、走って逃げればよかったんだ。


 後悔しても遅い。


 強く押され、開け放たれた体育倉庫の中に勢いよくしりもちをついた。


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