体育館12:25~私のみる景色~

「そういえば、私のことってみんなが見つけてくれたんだよね? ほんと、ありがとね」


 いけない、いけない。


 忘れるところだった。


 見つけてくれたお礼はちゃんと言わないとねっ。


 私が言うと、その場がしーんと静まり返った。


 え、なに?


 何か変なこと言った?


「あー、あのね? 亜希を見つけてくれたのは、佐伯先輩なんだよ」


 凉は悔しそうな顔をして、そう言った。


 うそ、佐伯先輩が?


 でも、なんで……。


 そして、その時のことを凉たちは話してくれた。


 お昼休みが終わる時間になっても戻ってこない私を探しに行こうと教室を出ると、そこに佐伯先輩がいたこと。


 その時の凉たちの明らかに普通じゃない様子を見た佐伯先輩は異変に気付いたのか、どこかへ走り出したこと。


 みんなで私を探していると、私を見つけたというメールがみーくんのケータイに入ったこと。


「つまりね、亜希が危ないって、一目散に駆けて行ったんだよ。佐伯先輩に、何も言ってないのにね」


 それを聞いて、心臓がドクドクと脈を打った。


 顔にも熱が集まってくる。


 だけど、それ以上に目頭が熱くなった。


「うぅっ、私、佐伯先輩のこと好きすぎて、死んじゃうかも……っ」


 だって、私を探してくれた。


 広い校舎の中を走り回る先輩の姿が浮かんで、涙がぽろぽろとこぼれた。


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