体育館12:25~私のみる景色~

 でも、想像したりするのは自由だよね。


 気を取り直して、小説をひらいた。


 ……私も、小説の中のヒロインになりたいなあ。


 もちろん、主人公は佐伯先輩で。


 そんなことを考えながら読んでいるせいか、内容が全然頭に入ってこない。


 今日はもう、読むのやめようかな。


 そう思って本を閉じようとした時、目の前に影がかかった。


「よお」


 低くて、少しドスのきいた声がして、思わずビクッとなる。


 だけどその声は、聞き覚えのある声で……。


「なっ、中原先輩っ!?」


 見上げた先にいたのは、もう関わらないでおこうと思っていたうちのひとり。


 いつもどおり黒くて短い髪をツンツンに立たせ、ピアスもジャラジャラ。


 制服を見事に着崩して、チャラい雰囲気を全面的にかもし出している、中原先輩だった……。


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