体育館12:25~私のみる景色~


 その姿は今にも消えそうなくらい儚げで目が離せなくて、しばらく玄関で立ち尽くしてしまった。


 だけど、どうして傘をさしてないのかな、とか、なんで泣いているんだろうって思いながらぼーっと見ているうちに、気づいたらいつの間にか先輩はいなくなっていた。


 もしかしたら、雨で泣いているように見えただけかもしれないけれど。


 それでも、泣いていたんだろうなって確信めいたものが心の中にあって。


 クールであまり笑わない、王子様みたいな先輩が泣いているのを目撃してしまった日から、気づいたら目で追って、気になる存在になっていた。


 それから、昼休みにバスケの試合を興味本位で見て、笑顔を見た瞬間恋におちた。


 そして、今に至るというわけだ。


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