体育館12:25~私のみる景色~
危険な香りに気づけませんでした
「ま、間に合ったあ……」
窓際の一番後ろっていう、最高ポジションに位置する自分の席に着いたのは、ちょうど授業開始のチャイムが鳴ったのと同時だった。
走って乱れた息を整えながら、英語の教科書をカバンから取り出していた。
……なんか、視線を感じるんですけど。
私の2つ前の右隣りの席、つまり、涼の席から。
『ケ・イ・タ・イ・ミ・ロ』
口パクで自分のケータイを指差しながら、私の方を睨んでる。
え、こわい。
こわいんだけど……?
そう思いながらもケータイを取り出そうとしたら、りんちゃんが教室に入ってきた。
意外なんだけど、りんちゃんは英語の先生なんだよね。
「んじゃ、教科書この前の続きからなー」
日直が号令をかけたあと、りんちゃんのその言葉で授業が始まった。
私はりんちゃんの目を盗んで、ポケットに入ってたケータイをこっそり取り出した。