身代わり姫君の異世界恋綺譚
紫鬼の存在を忘れているわけではない。

じっと見つめる紅い瞳に囚われてしまいそうで怖い。

少しご飯を口に運び、真白の口にあまりおいしいと感じられない汁を飲む。

煮物のようなお皿に箸をつけた時、何かが動いた。

――えっ?

「いやっ!」

真白はお膳から飛びのいた。

「どうしたのだ!?」

清雅がお膳に近づいて皿の中をのぞく。

「お、お皿の中っ!」

真白の顔面が蒼白になっている。

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