身代わり姫君の異世界恋綺譚
清雅はまじまじと皿の中を見ると、煮物の中に弱ったこおろぎみたいな虫がいた。

「真白、落ち着け。お前が動揺すると穢れを受けやすい」

紫鬼はゆっくりと真白の所へ来ると、ぶるぶる震えている身体を抱きこんだ。

「なんと言うことだ! 料理に虫が入るなどとは! 桔梗! 桔梗はいないか!? ええい! 誰でも良い!」

清雅が御簾を上げ、大声をだした。

紫鬼に抱かれた真白は落ち着いてきた。

「せ、清雅、もう良いよ。私が騒ぎ過ぎただけだから」

「いや、こんなことがあってはならないのだ!」

清雅の怒りに、紫鬼は何も言わない。

清雅も女房達の真白への酷い嫌がらせがわかったのだろう。

「紫鬼、何とか言ってっ」

再び、清雅は廊下で桔梗を大声で呼んでいる。

真白の記憶をたどり嫌がらせを受けている事を知っている紫鬼はこの際、清雅がしっかりと注意したほうが良いと考えていた。

< 101 / 351 >

この作品をシェア

pagetop