身代わり姫君の異世界恋綺譚
「いや、今祓っても効き目はないだろう。琴姫の身体に入り、もっと物の怪が力をつけたときの方が良い」

「それでは琴姫の身体が危ないです!」

顔は拝見できなかったが美しい声の持ち主、琴姫を思い出す

「今の段階では祓ってもまた琴姫の身体にとりつくだろう」

清雅は頷いた。

――父上の言う事はもっともだ。

「話は変わるが、先ほどは話の途中だったな……真白は大丈夫なのか?」

清文が訪ねる。

「少しの穢れも吸収してしまう体質らしく床に伏せっております」

「そうか……清雅、陰陽師寮の気が乱れておる。修復を清重とやってくれ」

阿倍清重(あべのきよしげ)は清文の兄の子供で清雅より5歳年上の15歳。

清雅ほどの力はないが、それでも由緒正しき陰陽師の血筋。

他の修行人よりは力があるのだ。

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