身代わり姫君の異世界恋綺譚
紫鬼の紅い瞳を真白はただ見つめ返すだけだ。

「何がそんなにお前を動揺させた?」

真白の下唇が震えている。

「紫鬼……清蘭様が……亡くなっていたなんて知らなかった」

「知っていても関係はないだろう?」

「ううん。私はてっきり生きているとばかり思っていたんだもん。でも考えるとみんないない人のように言っていたから気になって……」

「清蘭は病に倒れあっけなく逝ってしまった」

その事を言う紫鬼の表情は辛そうに見えた。

「紫鬼の力でも助けられなかったの?」

「その頃、私は1ヶ月間この屋敷にはいなかったのだ」

ここへ戻った時には清蘭はすでに亡くなっていた。

< 121 / 351 >

この作品をシェア

pagetop