身代わり姫君の異世界恋綺譚
「そんな……恋人だったんでしょ? 恋人が突然死んじゃうだなんて……」

真白の目から涙が零れ落ちた。

「真白……」

「紫鬼がいれば助けてあげられたんでしょ?」

真白は布団の上に起き上がり、紫鬼を見つめた。





『わらわの事をあの娘が話しておるわ……』

琴姫の身体から出た清蘭は陰陽師寮のはるか上空を彷徨っていた。

だが、清蘭が喜ぶのもつかの間。

紫鬼が物の怪の気配を察し、真白の身体を抱きしめた。

「し、紫鬼っ?」

突然抱きしめられた真白は戸惑う。



『あの娘が見えなくなった。紫鬼様があの娘の側におられるのだ……』

紫鬼に恋い焦がれるあまり、早くあの娘の身体を乗っ取り、抱かれたいと願う清蘭だった。

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