身代わり姫君の異世界恋綺譚
「真白~、入るぞ~」
間延びした声で、清雅は真白の部屋に入った。
入った途端に「うわーぁっ!」と叫ぶ。
その声に真白は驚き、紫鬼の腕の中から抜け出そうともがく。
抜け出そうと必死だが、紫鬼の強い力に捕らえられて抜け出せない。
「静かにしていろ」
次の瞬間、真白の身体は金縛りにあったように動けなくなった。
「清雅、早く結界を修復するんだな」
「なぜそれを? 先ほど父上に直す様にと言われたばかりなのに」
「物の怪の気配を感じた」
「わかったのだ。すぐに兄上を捕まえて修復してこようぞ」
そう言うと清雅は出て行った。