身代わり姫君の異世界恋綺譚
真白は紫鬼の腕の中で眠りに落ちていた。

あどけない寝顔に紫鬼の表情が柔らかくなる。

――眠っていれば辛さ、苦しみは忘れていられる……。

真白の髪を優しく撫でると、布団に真白を横たえた。

そして紫鬼は障子の向こうに視線を向けた。

「紫鬼様」

障子の向こうから紅の声。

「紅、ここへは近づくな」

冷たい紫鬼の声に、障子の向こうの紅は動揺した。

「紫鬼様! 出て来てください」

――紫鬼様のお姿が見たいのに……。

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