身代わり姫君の異世界恋綺譚
『そうじゃ、わらわは清蘭である』

「なんて事……」

清蘭は去年亡くなっている。

それなのに声が聞こえると言う事は清蘭が物の怪になってしまったという事。

「どうして、怨霊になんかに……」

『わらわはまだこの世に未練が残っている。紫鬼様が欲しいのじゃ』

――紫鬼様が欲しい?

由緒正しき阿倍家の姫として育った清蘭は美しく、紅は紫鬼の恋人として認めていた。

だが、亡くなった時に安堵したのも確か。

紫鬼が清蘭を忘れて、自分を愛してくれればと思っていた。

だが、この世界に真白がやって来た。

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