身代わり姫君の異世界恋綺譚
「真白っ! 遊びに行くぞっ!」

障子を大きく開けた清雅は弾む声で言った。

だが、部屋に真白はいなかった。

「どこへ行ったのだ? また池か?」

真白の行く所は限られている。

最近のお気に入りは屋敷の裏手にある池だ。

池に自分で作った竿と、小さなミミズをつけて釣りをするのだ。

特に釣りが好きなわけではないが、暇を持て余している真白のかっこうの遊び場所なのだ。

ただし、池の魚が釣れたことはない。

もちろん女房たちは良い顔はしないのだが。

< 135 / 351 >

この作品をシェア

pagetop