身代わり姫君の異世界恋綺譚
◇◆◇
真白は紫鬼が現れるのを待っていた。
突然目の前に現れるのを真白が嫌う為、ちゃんと障子を開けて入ってきてくれる。
「早く来ないかな……」
明日、紫鬼がついて来てくれるかが心配な真白だ。
だが、待てどもいつも来る時間に来ない。
「どうしたんだろう……」
真白は障子を開けて廊下に出た。
昼間はあんなに暑かったのに、そよそよと吹く風が気持ちいい。
真白のまっすぐ垂らした茶色い髪がさわさわと揺れる。
この世界の月はかなり大きく見える。
手を伸ばせば届きそうなほどだ。
真白は思わず手を伸ばした時、草むらをかき分ける音が聞こえた。
「だ、誰っ!?」
目を凝らすと暗闇の中にぼんやりと人影が見えた。