身代わり姫君の異世界恋綺譚
「真白! 真白! 目を覚ますのだ!」

紫鬼に身体を揺さぶられた真白はビクッとして目を開けた。

恐怖でいつも大きな目はさらに大きく見開いている。

「し……き……」

紫鬼の紅い瞳と紫のサラサラとした髪を見て安堵する。

――夢……違う……夢じゃない。

「私……」

男に殴られたのを思い出し、右手を頬にもって行く。

口の中も血の味がしていたはずだった。

――どこにも傷も痛みもない……。

「紫鬼が助けてくれたの?」

「私を呼ばなかったらお前は怨霊に取り込まれていただろう」

「怨……霊……? あの男は人間じゃなかったの?」

怨霊と聞いて背筋がゾクッと寒くなる。

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