身代わり姫君の異世界恋綺譚
「あぁ。この者からは何も感じられぬ。変な格好をしているが、悪い娘ではないだろう。頭はおかしいようだが」

少年との会話に真白は苛立った。

「頭はおかしくなんかないわ! 貴方達の方がよっぽどおかしい! 早く術とやらを解いてよ!」

乱暴に言い捨てると、清雅が怖い顔をして真白を睨んだ。

「紫鬼に向かってそのような言葉を! 姉上に似ているのは外身だけだな!」

清雅が真白に向かって言う。

真白はもう何がなんだか分からなくて涙が出てきた。

急に悲しくなり、喉の奥から絞り出すような嗚咽を漏らす。

「う……っく……」

「紫鬼っ! この娘泣いている!」

少し慌てたような清雅に、紫鬼は口元を緩ませる。

そして口の中で何かを呟くと、真白の身体は自由になった。

だが、真白は布団の上に寝たまま泣いていた。
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