身代わり姫君の異世界恋綺譚
◇◆◇

「わぁ~ すごくきれいな所~!」

牛車を降りて思いっきり、腕を上げて伸びをする。

せみとひぐらしの鳴き声がうるさいが、目の前には小川が流れ木陰に入ると気持ちいい。

――おばあちゃんちみたい……。

母方の実家は田舎で、やはり小さな小川が流れている。

夏休みになると1週間は泊まりに行っていた。

戻れないと考えるだけで気持ちが落ち込む。

「真白~。今日はもう遅い。明日釣りをしよう」

清雅は黙り込んでしまった真白に明るく言った。

「う、うん。そうだね。明日が楽しみっ。川で泳ごうね?」

「お、泳ぐぅ?」

泳ぐと聞いて清雅が驚いて目を見張る。

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