身代わり姫君の異世界恋綺譚
「紫鬼、どうしたんだろう。術は解いたのじゃろう? 娘が泣き止まぬ」

泣きじゃくる真白を見て、清雅がおろおろとするばかり。

紫鬼は立ち上がると、真白の傍に腰を下ろした。

「……家に帰らせて……ひっく……」

紫鬼は真白の顔にかかる髪を、そっと払おうとした……が、長く鋭い紫鬼の爪は真白の頬に一筋の傷を作ってしまった。

ビリッとした痛みに、真白は目を見開いて驚いた。

「なんと……信じられぬほど、柔肌だな……」

自分の爪で傷を作ってしまったのは、
柔らかい肌のせいとばかりに言う。

紫鬼の指先が触れた頬から、つーっと血が流れる。

驚いたまま固まっている真白の頬に、無表情の紫鬼は顔を近づけた。

「血が……すまぬ。今すぐ治す」

紫鬼の顔が真白の頬に近づき、血の出ている傷口をペロッと舐められる。

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