身代わり姫君の異世界恋綺譚
「どうしたのですか? 忠臣様もお楽しみの最中かと」

縁側に胡坐をかいた忠臣の横に酒と杯を置く道重は聞いた。

「道重、昼間のあの娘が気になりやる気が失せたのだ」

「は、はぁ……」

――あの風変わりな娘をたいそうお気に召したものだ……。

道重は空いた杯に酒を注ぐ。

「明日あの娘に会いに行くぞ」

「忠臣様、あの娘は阿倍家の客人のようです。お戯れのお相手には……」

「道重、うるさいぞ。私はあの娘が気に入ったのだ」

こういう時の忠臣はがんとして周りの言葉に耳を貸さない。

道重は仕方ない……と、心の中で大きな溜息を吐いたのだった。

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