身代わり姫君の異世界恋綺譚
桔梗が持ってきてくれた冷えた梨を食べ終わると、再び何もする事がなくなった。

「庭に出るくらいなら良いよね……」

真白は庭に出てあてもなくうろうろした。

「お花、摘んじゃおうかな」

庭には色々な花が咲いている。

「あれは山ユリ?」

ラッパのような白い花を見つけて手を伸ばした。

まだつぼみの状態だったが、自分が知っている唯一の花だったので嬉しくなった。

つぼみに触れると、不意に花びらがゆっくりと開き始めた。

「え……? 開き始めた……」

< 179 / 351 >

この作品をシェア

pagetop